季節商品の発注が難しいのは、シーズンの真ん中ではありません。入り口と出口です。
立ち上がりに乗り遅れれば、一番おいしい序盤に棚が空く。かといって終盤に強気を続ければ、シーズン明けに来年まで動かない在庫が残る——。「今年はいつから仕込む?」「そろそろ絞る?」という判断を、毎年、記憶と勘でやり直していないでしょうか。
この記事では、季節商品の入り口と出口の失敗がなぜ毎年繰り返されるのかと、季節の波を計算に載せる方法を解説します。
課題の解説:失敗が「入り口」と「出口」に集中する理由
入り口の失敗(立ち上がりの遅れ)は、構造的に起きます。立ち上がりの発注は、まだ売れていない時期に、リードタイムの分だけ先回りして仕込む必要があります。「売れ始めてから頼む」では、入荷する頃にシーズン序盤が終わっている。つまり入り口の判断は実績が使えない先読みの判断であり、記憶頼みでは毎年ぶれます。
出口の失敗(持ち越し在庫)は、心理的に起きます。シーズン終盤も日々の売上はまだ立っているため、「まだ売れている」という感覚が発注を止めさせません。しかし終盤に頼んだ商品が売り切れる前にシーズンが終われば、残りは来年までの持ち越し在庫。保管費と値下がりと型落ちのリスクを、1年間抱えることになります。出口では、今日の売れ行きではなく「シーズンの残り日数」で判断しなければならないのに、人の判断は目の前の売上に引きずられるのです。
一般的な対処法と、その限界
①昨年同月比の手計算:昨年実績を横に置いて発注量を決める方法。方向は正しいのですが、「昨年の水準」と「今年の水準」の違い(トレンド・取引先の増減)の補正が勘になりがちで、商品数が多いと全部は追いきれません。
②カレンダー固定(毎年◯月◯日から仕込む):判断を型にする試みですが、季節の前後ズレ(暖冬・冷夏・早い梅雨明け)に対応できず、固定日程が実態とずれた年に大きく外します。
③経験豊富な担当者の知見:季節商品の変化を捉えるうえで重要な判断材料です。判断の背景を設定や運用ルールとして共有できれば、担当者が変わっても知見を活かし続けられます(→経験豊富な担当者の知見を引き継ぐ方法)。
「α-発注」でのソリューション
季節の波形は、実績から自動で学習される
「α-発注」は、商品ごとの季節性——1年の中の売れ方の波形——を出荷実績から自動で学習します(→仕様は季節性・昨年実績の考慮)。「この商品は3月から動き始め、6月にピーク、8月に落ちる」という形が予測に織り込まれ、今年の売れ方の水準と、毎年の波形の組み合わせで先が読まれます。「いつから仕込むか」の議論を毎年やり直す必要がなくなります。
入り口:リードタイムから逆算した前倒しが自動で組まれる
立ち上がりの需要増は予測に織り込まれているため、発注はリードタイム分だけ先回りして立ち上がります。「売れ始めてから慌てて頼む」ではなく、「売れ始める頃に入荷している」発注です。リードタイムの長い商品(輸入季節品など)ほど、この逆算の価値は大きくなります。
出口:終盤の発注は、自然にブレーキがかかる
季節の下り坂も波形として予測に入っているため、シーズン終盤の推奨発注量は「残り期間で売り切れる水準」へ自然に絞られていきます。「まだ売れているから」という心理に引きずられない、残存シーズンベースの数量です。それでも想定より早くシーズンが終わりそうな年は、在庫の積み上がりを監視が検知します(→監視アラート)。
年ごとのズレは、検知と補正で扱う
暖冬・冷夏などによる立ち上がりの前後ズレは、売れ方の変化として検知されたタイミングで補正できます。今年限りの販促の山を重ねる場合はイベント設定(→セール・イベントの需要織り込み)、決算などの自社都合の調整は在庫レベル計画(→時期による在庫水準の切り替え)と、役割を分けて扱います。
活用イメージ:春の立ち上がりが勝負の園芸・ガーデニング用品卸
園芸・ガーデニング用品卸のAO社(商品点数 約3,500、売上の6割が3〜6月に集中、序盤の欠品と秋口の持ち越し在庫が毎年の課題)のモデルケースです。
導入前:経験豊富な部門責任者が季節の変化を見極めていましたが、その判断基準をチームで共有する仕組みがありませんでした。判断のタイミングがずれた年は主力商品の欠品や、シーズン後の持ち越し在庫が発生していました。
導入後:商品ごとの季節波形が実績から学習され、立ち上がりの発注はリードタイム逆算で自動的に前倒し。終盤は推奨量が絞られていき、想定外の冷夏だった年は積み上がり検知から早めに発注を止められました。
変化:序盤の欠品が減って一番売れる時期を取りこぼさなくなり、シーズン明けの持ち越し在庫も縮小。「いつから・いつまで」の判断が号令から計算に移り、部長の経験は波形の妥当性チェックと例外判断に活きる形になりました。
よくある質問
Q. 今年は立ち上がりが早そう(遅そう)だと感じたら、手で調整できますか? A. できます。確定前の数量調整はもちろん、根拠を確認したうえでの見込みの補正も可能です。天候などによる年ズレは、売れ始めの実績にも早期に表れるため、検知と組み合わせて対応します。
Q. 昨年実績のない新しい季節商品はどうなりますか? A. 類似商品の実績を引き継いで立ち上げる方法があります(→新商品の発注量の決め方)。「この商品は昨年のあの商品と同じ波形のはず」という判断を、設定として与える形です。
Q. シーズン持ち越しが確定した在庫は、どう扱えばよいですか? A. まず発注側の出口(終盤の絞り込み)を仕組みにして、来年の持ち越しを減らすのが基本です。すでに持ち越した在庫は、来季の仕込み量から差し引く対応と、保管費や値下げ損失を踏まえた処分判断の両面で扱います。
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