「来月、◯◯商事さんの大口が決まりそうです」「9月、量販店の店頭企画に載ります」——。
未来の需要を一番早く知っているのは、システムではなく営業です。ところがその情報は、口頭やチャットで発注担当に「伝わったり、伝わらなかったり」する。伝わっても、発注量への翻訳は担当者の感覚頼み。結果、「聞いてない」欠品と、「張り切りすぎた」過剰在庫が繰り返されます。
この記事では、営業がつかんだ情報を発注量に確実に反映する、社内の接続方法を解説します。
やりたいことの整理
「営業情報の発注への反映」の要件は、次の4つです。
- 情報が型分けされている:営業情報は中身によって発注への効かせ方が違う。型を区別して受け取る
- 反映ルートが決まっている:型ごとに「誰が・どこに・何を登録するか」が決まっていて、口頭伝達に依存しない
- 量とタイミングへ自動で翻訳される:登録された情報が、リードタイムから逆算した「間に合う発注」に反映される
- 終わった後の実績が、日常の予測を汚さない:販促や特需の山が「毎月の需要」として学習されない
肝心なのは1です。営業情報はすべて同じ「上乗せ」ではありません。確定した受注、計画された販促、売れ方の水準が変わる話——この3つは、発注への正しい効かせ方がそれぞれ違います。
手作業でやると、こうなる
多くの会社の実態は、「営業→発注担当」の口頭・メール・チャット連絡です。この運用には構造的な穴があります。
伝達の抜け:伝える・伝えないが営業個人の習慣次第。「言ったつもり」「聞いてない」が定期的に起きます。翻訳のばらつき:「大口が入りそう」を発注量にどう反映するかが担当者の勘。確度の低い話に張り込んで外れる、確度の高い話に構えず欠品する、の両方が起きます。事後の汚染:特需の実績がそのまま翌月の予測に効いて、山の後に過剰発注が続きます。記録の不在:なぜその量を発注したのかが残らず、結果の検証も引き継ぎもできません。
「α-発注」での実現方法:情報を3つの型に分けて接続する
型1:確定した受注 → 発注への上乗せ
「◯月◯日に△△を1,000ケース納品」という確定情報は、確実に必要になる数量です。確定受注分を発注に反映する運用で、通常需要の分と二重にならない形で上乗せします。反映漏れと二重計上という2大事故の防ぎ方も含めて、大口受注分を発注に上乗せしたいで詳しく解説しています。
型2:計画された販促 → イベント登録
セール・店頭企画・キャンペーンなど、期間と対象が決まっている計画は、イベントとして登録します(→セール・イベントの需要織り込み)。期間・対象・見込みを登録すれば、リードタイムから逆算して「間に合う回の発注」に増加分が上乗せされ、終了後はその実績の扱いが整理されて日常の予測を汚しません。回を重ねるほど、過去のイベント実績が次回の見込みの材料になります。
型3:売れ方の水準が変わる話 → 変化点の指定
「大手チェーンで定番採用が決まった」「新しい販路が立ち上がる」など、これからの売れ方が段階的に変わる情報は、一時の上乗せではなく水準の切り替えです。変化点を指定して予測を新しい水準に切り替え、立ち上がり期は予測値の指定で支えます(→突発出荷の除外・変化点指定)。
運用ルール:「聞いたら、登録する」を接続点にする
3つのルートが決まれば、社内ルールはシンプルになります。営業情報は、チャットで伝えて終わりではなく、型を判断して登録するところまでが伝達——。登録の実務は発注担当に集約する形でも、営業側から所定の連絡フォーマットで渡す形でも構いません。重要なのは、口頭伝達という「消える媒体」を、設定という「残る媒体」に置き換えることです。登録された情報は計算根拠にも表れるため、「なぜこの量か」の説明と事後検証がそのまま記録に残ります。
活用イメージ:「聞いてない」欠品が続いていた化粧品・日用品卸
化粧品・日用品卸のAG社(商品点数 約8,000、量販店向けの店頭企画・チラシ販促が多く、大口のスポット案件も月数件)のモデルケースです。
導入前:販促・大口の情報は営業から発注担当へ口頭とチャットで連絡。伝達漏れによる「企画開始日に在庫がない」欠品が四半期に数回、逆に確度の低い話に構えた在庫が売れ残るケースも散発していました。特需の翌月は決まって発注が過大に出ていました。
導入後:情報を「確定受注」「計画販促」「水準変化」の3型に分け、それぞれ上乗せ・イベント登録・変化点指定で反映するルールを整備。営業からの連絡は所定フォーマットに統一し、登録までを発注担当の業務として定義しました。
変化:「聞いてない」欠品がほぼなくなり、特需明けの過剰発注も解消。発注量に営業情報がどう効いているかが計算根拠として残るため、企画終了後の振り返り(見込みと実績の差)が営業と発注の共通言語でできるようになりました。
よくある質問
Q. 確度が五分五分の「決まりそう」な案件は、どう扱えばいいですか? A. 確定するまでは型1(上乗せ)にはしないのが原則です。確度が読めない段階では、リードタイムと相談して「いつまでに確定すれば間に合うか」の期限を営業と共有しておき、確定した時点で登録する運用が安全です。どうしても先行手配が必要な長リードタイム商品は、リスクの持ち方を含めて運用診断でご相談ください。
Q. 営業がフォーマットで連絡してくれるか不安です。 A. 全社ルールの整備を待つより、まず発注担当側の「聞いたら登録する」を徹底する形で始めるのが現実的です。登録が習慣化すると「登録に必要な項目」が明確になり、営業への依頼も具体化します。
Q. 販促の見込み数量はどう決めればいいですか? A. 過去に類似の販促があればその実績が材料になります。初回は計画値で設定し、期間中の売れ行きは監視機能で追って早めに補正する運用が基本です(→監視アラート)。
営業と発注の情報接続の設計は、無料運用診断でご相談ください。 商談の中で18問の診断にお答えいただくと、その日のうちに「貴社の場合の運用の形」をまとめた仮運用設計案をお渡しします。 無料運用診断を申し込む →
関連ページ
- 大口受注が決まっている分を発注に上乗せしたい(型1:確定受注)
- セール・イベントの需要織り込み(型2:計画販促の機能仕様)
- 突発出荷の除外・売れ方の変化点指定(型3:水準変化の機能仕様)
- セールのたびに発注量の手計算で困っている(課題別活用シーン)
- 売れ行きの変化に、発注量を自動で追随させたい(活用例)
東京大学発の