商品の売れ行きは、止まっているところを見たことがないくらい、変わり続けます。じわじわ伸びる商品、静かに衰える商品、ある日を境に水準が変わる商品——。
一方で、発注量の見直しは月1回の会議や「気づいたとき」に行われがちです。この時間差が、伸び始めの欠品と、落ち目の商品の在庫の山を作ります。この記事では、売れ行きの変化に発注量が自動で追随する体制の作り方を解説します。
やりたいことの整理
「変化に追随する発注」の要件は、次の4つです。
- ゆるやかな変化は、何もしなくても追随する:じわじわの増減が、見直し会議を待たずに毎回の発注量へ反映される
- 急な変化は、見逃さず検知される:伸び・落ちの急変が、人が気づく前に知らされる
- 変化の「種類」を区別して扱える:一時的な山(バズ・スポット)と、水準の変化(定番採用・販路拡大)を混同しない
- ノイズに過剰反応しない:日々の細かな上下にいちいち発注が振り回されない
3と4が肝心です。すべての変化に即座に追随するのが正解ではありません。一時的な山に追随すれば翌月の過剰在庫になり、日々のノイズに追随すれば発注が乱高下します。「追随すべき変化」と「無視すべき変化」の仕分けこそ、このタスクの本体です。
手作業でやると、こうなる
Excel運用での「追随」は、担当者が売上の変化に気づき、発注量の目安を手で直す形です。
弱点は明確です。遅れ:数千商品の売れ行きを人が見張るのは不可能なので、気づきは「欠品してから」「在庫が積もってから」になります。月1回の一斉見直しでは、変化の速い商品に2〜4週間の遅れが生じます。過剰反応と無反応の混在:目立つ商品の変化には過敏に反応し(先週売れたから倍・先月の特需を来月も見込む)、目立たない商品の変化は放置される——反応の感度が商品の目立ち方で決まってしまいます。惰性:結局大半の商品は「前回と同じ量」に落ち着き、変化への追随は主力の一部だけ、が実態になりがちです。
「α-発注」での実現方法:2層の追随
1層目:ゆるやかな変化は、予測が自動で追随する
「α-発注」の推奨発注量は、商品ごとの需要変動を捉えて毎回計算されます。じわじわ伸びる・じわじわ落ちるという日常の変化は、人が何もしなくても発注のたびに数量へ反映されます。日々の細かな上下は需要のばらつきとして安全在庫が吸収するため、ノイズへの過剰反応も起きません。「月1回の見直し」に相当する作業が、毎回の計算に溶け込む形です。
2層目:急変は検知して、人が種類を仕分ける
急な変化は、売れ方の急変や欠品リスクとして監視機能が検知し、知らせます(→監視アラート)。知らせを受けた人がやるのは、変化の種類の仕分けです。
- 一時的な山(メディア紹介・スポット注文)→ その期間の実績を学習から除外し、山の後の発注が引きずられないようにする
- 水準の変化(定番採用・販路拡大)→ 変化点を指定し、予測を新しい水準に切り替える。立ち上がりは予測値指定で支える
判断の軸はひとつ、「その売れ方を来月も期待するか」です(→仕様と使い分けの詳細は突発出荷の除外・変化点指定)。計算根拠が日本語で確認できるため、「どの期間の実績が効いているか」を見ながら仕分けできます。
計画された変化は、事前に教える
自社で作る変化——セール・販促——は、検知を待つまでもなく事前に分かっています。これはイベントとして先に登録しておきます(→セール・イベントの需要織り込み)。毎年の季節の波は自動学習が受け持つため、登録は不要です。
活用イメージ:トレンドの入れ替わりが速いペット用品卸
ペット用品の卸・ECのAD社(商品点数 約6,000、SNS発のトレンド商品と定番品が混在)のモデルケースです。
導入前:発注量の見直しは月1回の会議で主力商品のみ。伸び始めた商品への増量が2〜3週間遅れて機会損失になり、ブームが去った商品は「いつもの量」の発注が続いて在庫が積み上がっていました。
導入後:日常の増減は予測の自動追随に任せ、担当者の仕事は検知された急変の仕分け(一時的か、水準変化か)に集中。SNSでバズった商品は期間除外、大手量販の定番採用が決まった商品は変化点指定、という運用が定着しました。
変化:月1回の見直し会議が不要になり、伸び始めの欠品と落ち目の積み上がりがともに減少。「全商品に目が届かない」問題が、「知らせが来た商品だけ仕分ける」運用に変わりました。
よくある質問
Q. 自動で追随するなら、人の判断は要らなくなるのですか? A. いいえ。日常のゆるやかな変化は自動、急変の「種類の仕分け」は人、という分担です。一時的な山か水準の変化かは、背景事情(なぜ売れたか)を知る人にしか判断できません。仕組みは判断の材料(検知と根拠)を揃える役です。
Q. 追随が効きすぎて、発注が乱高下しませんか? A. 日々の細かな上下はばらつきとして安全在庫が吸収する設計のため、ノイズで発注が振り回されることはありません。除外・変化点も「原因を説明できる明確なイレギュラー」に絞って使うのが原則です。
Q. 落ち目の商品は、どこまで自動で絞られますか? A. 売れ行きの低下は予測に反映され、推奨発注量は自然に細ります。終売・切り替えが決まっている商品の扱いは死に筋・ロングテール在庫の最小化、後継品への実績引き継ぎはリニューアル品の対応をあわせてご覧ください。
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関連ページ
- 突発出荷の除外・売れ方の変化点指定(機能仕様)
- テレビ・SNSで急に売れた商品の発注が過剰になって困っている(一時的な山の課題)
- 欠品リスク・過剰在庫の監視アラート(機能紹介)
- 数千商品の発注点・安全在庫の見直しを、自動化したい(活用例)
東京大学発の