SOLUTION|課題別ソリューション

「在庫を減らせ、でも欠品はさせるな」の板挟みで困っている

期初の経営会議では「在庫が多すぎる。◯%削減」と言われる。翌週、営業からは「欠品で失注した。どうしてくれる」と詰められる——。

在庫の責任者・発注部門の管理職は、この矛盾した2つの要求の間に立たされ続けます。どちらの言い分も正しいから、余計に苦しい。この記事では、板挟みが生まれる構造と、この対立を「配分の議論」に組み替えて抜け出す方法を解説します。

課題の解説:なぜ板挟みになるのか

①見ている数字が違う。経営は在庫「金額」(貸借対照表の総額)を見て、営業は個別商品の「欠品」を見ています。総額と個別——粒度の違う2つの数字の間に、翻訳者がいません。その翻訳役を、在庫責任者が一人で引き受けている状態が板挟みの正体です。

②在庫は総額で語られ、配分で決まる。「在庫を2割減らせ」という号令には、「どの商品を」がありません。しかし在庫と欠品の実態は商品ごとの配分で決まります。総額の号令を商品ごとの判断に翻訳する道具がないと、削減は「減らしやすい商品から」になり、守るべき商品まで削られて欠品が出ます。欠品が出ると揺り戻しで積み増しが起き、在庫は元通り——このいたちごっこは欠品と過剰在庫の改善方法で解説したとおりです。

③説明の言葉を持っていない。「これ以上減らすと欠品が増えます」と直感では分かっていても、それを数字で示せなければ、会議では号令に勝てません。板挟みの本質は、判断の問題である以上に、説明の道具の問題なのです。

一般的な対処法と、その限界

①期末だけ絞る:評価タイミングに合わせて一時的に発注を止める方法。期末在庫の数字は作れますが、期明けの欠品と発注の山という形で代償を払います。誰も得をしない儀式です。

②声の大きい方に従う:直近で怒られた方に合わせて方針が揺れる状態。在庫は「積む→怒られる→絞る→欠品→積む」の振動を繰り返し、現場は疲弊します。

③Excelで説明資料を作り込む:正しい方向ですが、数千商品の在庫・欠品・適正水準を人手で集計し続けるのは重労働で、資料を作る頃には数字が古くなっています。

「α-発注」でのソリューション:「一律削減」を「配分の議論」に変える

「守る商品」と「絞る商品」を方針として明文化する

「α-発注」では、商品グループごとの在庫方針で「最重要は手厚く守る」「標準はバランス」「ロングテールは絞る」というメリハリを設定できます。これは単なる機能ではなく、経営と現場の合意を載せる器です。「最重要200品は厚く守る。その在庫増は経営が許容する。その他で全体を絞る」——この形の合意ができれば、板挟みは「どちらに従うか」から「配分をどう設計するか」の議論に変わります。

総額の目標を、商品ごとの水準に翻訳する

方針が決まれば、商品ごとの適正水準と推奨発注量は需要予測から自動計算されます。「全体をやや絞る」調整も、守る商品のガードを保ったまま実行できます。号令を受けるたびに数千商品の発注を手で見直す——という不可能な翻訳作業を、仕組みが肩代わりします。

「在庫と欠品」を同じ画面で報告する

板挟みから抜け出す説明の武器は、在庫と欠品を並べて見せることです。分析ページでは在庫と欠品の状況を継続的に確認でき、「在庫はこれだけ下がり、欠品はこの水準を維持」という報告がそのまま出せます。在庫だけの報告は「まだ減らせる」を呼び、欠品だけの報告は「積め」を呼びます。両方を同じ画面で見せることが、一方的な号令への最大の防御になります。

「これ以上絞ると何が起きるか」を根拠つきで示せる

推奨発注量には計算根拠が表示されるため(→AIの計算根拠の表示)、「この商品の在庫はこの需要とリードタイムに対する必要量」という説明が個別にできます。感覚の応酬だった会議に、商品単位の根拠を持ち込めます。

活用イメージ:「在庫2割削減」の号令を配分の議論に変えた包装資材卸

包装資材・消耗品卸のV社(商品点数 約10,000、在庫管理課長が発注部門を統括)のモデルケースです。

導入前:経営からは毎期「在庫削減」の号令、営業からは欠品のたびに突き上げ。課長は期末の発注絞り込みと期明けの積み戻しを繰り返し、会議のたびに謝る側に回っていました。

導入後:主要得意先の指定品を「守るグループ」として経営・営業と合意したうえで、全体の水準を計画的に絞る運用へ。月次報告は分析ページの「在庫と欠品」をそのまま提示する形に変更しました。

変化:在庫は過剰だった商品群を中心に圧縮が進む一方、指定品の欠品は横ばいを維持。「もっと減らせ」「欠品をなくせ」という感覚の応酬が、「守るリストの見直し」「許容範囲の再設定」という具体的な議論に変わり、課長が一人で板挟みを吸収する構図が解消されました。

よくある質問

Q. 経営への報告には、どの数字を使えばよいですか? A. 「在庫金額(または在庫日数)の推移」と「欠品の発生状況」を必ずセットで示すことをおすすめします。片方だけの報告は必ず偏った号令を呼びます。あわせて「守る商品リストとその在庫コスト」を明示しておくと、削減議論のたびに守りの前提を確認できます。

Q. 「一律◯%削減」と言われたら、どう返すのがよいですか? A. 「削減幅」を争うのではなく、「先に守る商品を合意させてください」と順序の話に持ち込むのが有効です。守る対象と許容欠品の合意があれば、残りの絞り込みは計算の問題になります。号令を方針の議論に変換する、この一手がいちばん効きます。

Q. 減らした結果、欠品が出たら結局責められませんか? A. だからこそ「どこまで絞り、どこから欠品リスクを許容するか」を事前に合意し、記録しておくことが重要です。方針として明文化された欠品は「事故」ではなく「織り込み済みのリスク」になり、責任の所在が個人から方針に移ります。


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関連ページ

この記事の目次
  1. 課題の解説:なぜ板挟みになるのか
  2. 一般的な対処法と、その限界
  3. 「α-発注」でのソリューション:「一律削減」を「配分の議論」に変える
  4. 活用イメージ:「在庫2割削減」の号令を配分の議論に変えた包装資材卸
  5. よくある質問
  6. 関連ページ

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