損益計算書は黒字。それなのに、月末の支払いはいつも綱渡り——。
その現金は、どこに消えたのか。多くの場合、答えは倉庫にあります。在庫とは、現金が商品の形で棚に積まれている状態です。仕入代金は先に出ていき、売れて入金されるまで現金には戻りません。在庫が膨らむほど、寝ている現金は増え、手元の資金は薄くなります。
この記事では、在庫が資金繰りを圧迫する構造と、「欠品を増やさずに」在庫を現金に戻していく方法を解説します。
課題の解説:在庫は「利益が出ていても」現金を食いつぶす
在庫と資金繰りの関係は、単純な算数で見えます。いまの在庫が何日分の販売量にあたるかを示す「在庫日数」に、1日あたりの仕入額を掛けたものが、在庫に寝ている現金の概算です。仕入が1日100万円で在庫が60日分なら、約6,000万円が棚の上で眠っています。もし在庫を50日分にできれば、約1,000万円の現金が戻ってくる計算です。
厄介なのは、在庫は会計上「資産」であり、費用として見えにくいことです。損益計算書だけでは変化を捉えにくいため、在庫の膨張が資金繰りを圧迫していても気づくのが遅れることがあります。
さらに、在庫は寝ている間にも劣化します。保管料、値下がり、期限切れ、型落ち——寝かせた現金は、目減りしながら戻ってきます。
一般的な対処法と、その限界
①「在庫を◯割減らせ」の号令:最も多く、最も失敗しやすい対処です。一律削減は、守るべき売れ筋の在庫まで削り、欠品による売上減で資金繰りをかえって悪化させます。減らしやすい商品(=発注を止めやすい商品)から減るため、削減の中身が最適とは限りません。
②処分セールで現金化:滞留在庫の出口としては必要な手段ですが、粗利を削って現金化しているため、繰り返せば体力を失います。そして入口(発注)を直さない限り、在庫はまた積み上がります。
③仕入を止める:一時的に現金は残りますが、売れ筋まで止まれば売上が落ち、数カ月後の資金繰りに跳ね返ります。
共通する誤りは、在庫を総額で捉えていることです。在庫の適正化は総額の問題ではなく、商品ごとの配分の問題です。過剰な商品を絞り、必要な商品は守る——この組み替えだけが、欠品を増やさずに在庫を減らします。
「α-発注」でのソリューション
商品ごとの「適正水準」が、過剰の分だけを絞る
「α-発注」では、出荷実績に基づく需要予測から、商品ごとの適正な在庫水準と推奨発注量が自動計算されます。実力以上に積まれていた商品は発注が自然に細り、在庫が適正水準まで下りていきます。一方、売れ筋の必要量は確保されるため、削減は「過剰だった部分」に集中します。号令による一律削減との最大の違いがここです。
「守る商品」を決めてから絞れる
資金繰り目的の在庫圧縮で最も怖いのは、主力の欠品です。商品グループごとの在庫方針で「絶対に守る商品」を先に決めれば、全体を絞りながら重要商品の守りは維持する、という配分の組み替えが計算に反映されます。
資金繰りの厳しい時期に合わせて、計画的に絞る
賞与や納税、仕入の山が重なる月など、資金繰りには季節があります。在庫レベル計画を使えば、「この時期はやや薄めに運用する」という意思を期間指定で計画に載せ、発注が自動でそれに沿います。突発の号令ではなく、計画としての在庫圧縮です。
どれだけ現金が戻るかは、導入前に試算できる
「うちの場合、在庫はどれくらい減る余地があるのか」は、感覚ではなくデータで確かめられます。無料運用診断では、必要な期間・項目が揃った出荷実績データ(目安:24カ月分)の受領から3営業日で、「導入していたら在庫と欠品がどうなっていたか」の効果試算をご提示します(→導入前シミュレーション)。導入企業では、在庫削減15%と欠品削減5%を同時に実現した実績があります。在庫15%が現金に戻るインパクトを、自社の在庫金額で一度計算してみてください。
活用イメージ:借入で仕入資金を回していた輸入生活雑貨卸
輸入生活雑貨卸のU社(商品点数 約5,000、海外仕入中心でリードタイムが長く、在庫は厚め)のモデルケースです。
導入前:長いリードタイムへの不安から「多めに仕入れる」判断が常態化し、在庫は増加傾向。仕入資金は短期借入への依存が強まり、経営者は毎月の資金繰り表とにらめっこの状態でした。
導入後:商品ごとの適正水準に基づく発注に切り替え、守るべき定番品を在庫方針で明確化。過剰に積まれていた中位・下位の商品から発注が細り、在庫は数カ月かけて緩やかに圧縮されていきました。
変化:在庫金額はおよそ1割下がった水準で安定し、その分の現金が手元に戻って短期借入への依存が軽減。「不安だから多めに」という判断の代わりに、根拠のある水準で仕入れる形になり、資金繰り表の見通しも立てやすくなりました。
よくある質問
Q. 在庫はどのくらい減らせるものですか? A. 商品構成と現状の在庫水準によるため、一概には言えません。だからこそ、号令の前に効果試算をおすすめします。実データに基づき「どの商品群にどれだけ圧縮余地があるか」を確認してから着手すれば、欠品リスクを抑えた計画的な圧縮ができます。
Q. 減らした結果、欠品が増えたら本末転倒では? A. そのとおりで、順序が重要です。先に「守る商品」と守り方を決め、絞るのは過剰と滞留に集中させる——この配分の設計が、欠品を増やさない圧縮の条件です。導入時の運用設計で、貴社の商品構成に合わせてご一緒に設計します。
Q. いま抱えている滞留在庫の処分もしたほうがいいですか? A. 出口(処分)と入口(発注の適正化)は両方必要ですが、優先すべきは入口です。入口を直さないまま処分だけ行うと、数カ月後に同じ在庫の山が再びできます。処分は、滞留期間・保管費・値下げ損失を踏まえて判断します。
在庫と資金繰りのお悩みは、無料運用診断でご相談ください。 貴社の出荷実績データから、「在庫がどれだけ現金に戻り得るか」を効果試算でご確認いただけます。 無料運用診断を申し込む →
関連ページ
- 「在庫を減らせ、でも欠品はさせるな」の板挟みで困っている(現場管理職の視点)
- 死に筋・ロングテール商品の在庫を最小限にしたい(絞る実務)
- 在庫レベル計画(時期による在庫水準の作り分け)(機能紹介)
- 導入前シミュレーション(効果試算)(機能紹介)
東京大学発の