安全在庫や発注点の計算式は一般に知られています。Excelで全商品分を一度計算した、という会社も少なくないはずです。
問題はそのあとです。計算した水準は、売れ方が変わった瞬間から古くなり始めます。数千商品の発注点・安全在庫を、需要の変化に合わせて更新し続ける——この「維持」の仕事こそが、人手では続かない本丸です。この記事では、水準の見直しを自動化する体制の作り方を解説します。
やりたいことの整理
「発注点・安全在庫の見直しの自動化」の要件は、次の4つです。
- 商品ごとに計算されている:全商品一律「◯日分」ではなく、商品ごとの需要のブレとリードタイムから水準が出ている
- 実績から自動で再計算される:売れ方が変われば、人が気づかなくても水準が追随する
- 例外が混ざらない:特売・突発需要のような異常値が、水準をゆがめない形で扱われる
- 方針は人が握ったまま:「この商品群は手厚く守る」という意思決定は人に残り、計算だけが自動になる
多くの現場で崩れるのは2です。導入時に頑張って計算した水準が、その後何年も見直されないまま使われ続ける——「計算はできるが、維持ができない」が実態です。
手作業でやると、こうなる
Excelでの水準管理の典型は、年1回(よくて四半期に1回)の一斉見直しです。全商品の出荷実績を集計し、標準偏差を計算し、水準表を更新する——数日から1週間がかりの行事になります。
この運用の問題は、見直しと見直しの間、水準が現実から乖離し続けることです。伸びている商品は水準が低すぎて欠品し、落ち目の商品は水準が高すぎて在庫が積もる。次の一斉見直しでようやく補正されますが、そのころには次のズレが始まっています。さらに、特売の山をそのまま含めて計算すれば水準は過大に、欠品期間の「売れなかった」実績を含めれば過小に——データの下ごしらえにも専門的な判断が要ります。
「一律◯日分」に逃げる会社が多いのは、この維持コストに耐えられないからです。そして一律設定は、重要商品に薄く・動かない商品に厚いという最悪の配分を生みます。
「α-発注」での実現方法
計算と更新:水準は「発注のたびに」再計算される
「α-発注」では、商品ごとの安全在庫・必要在庫水準が出荷実績に基づいて継続的に計算され、発注リストの作成のたびに最新の水準が反映されます。年1回の行事だった見直しが、日常の計算に溶け込む形です。静的な「発注点の表」を人がメンテナンスするのではなく、「いま発注すべきか・いくつ発注すべきか」の判断自体が毎回、最新の実績から導かれます。
例外処理:異常値が水準をゆがめない
特売・突発需要の山は、日常の需要と切り分けて扱えます(→突発出荷の除外・変化点指定)。「先月のテレビ紹介の山を含んだ安全在庫」のような汚染を防ぎ、水準の根拠を健全に保ちます。
方針:メリハリは人が決める
「主力は欠品許容1%で厚く、テールは在庫効率優先で薄く」という守り方の方針は、商品グループごとの在庫方針として人が設定します。方針はグループ設計として人が握り、その方針に沿った商品ごとの水準計算と日々の追随は仕組みが担う——という分担です。水準の計算根拠は日本語で確認できるため(→AIの計算根拠の表示)、「なぜこの商品は厚めなのか」をいつでも検証できます。
活用イメージ:年1回の「水準見直し週間」をなくした医療・介護用品卸
医療・介護用品卸のAB社(商品点数 約8,000、施設向け定番品と季節変動品が混在)のモデルケースです。
導入前:発注点と安全在庫は年1回、担当者2名が1週間がかりで一斉見直し。期中は水準が固定のため、伸びた商品の欠品と、動きが鈍った商品の在庫積み上がりが、見直し直前の時期に集中して発生していました。
導入後:水準の計算は出荷実績からの自動再計算に移行。担当者の仕事は、方針(守る商品群の指定・欠品許容のメリハリ)の設計と、監視アラートへの対応に変わりました。
変化:年1回の見直し行事が不要になり、水準は需要の変化に月次ではなく日次で追随。「見直し直前に問題が集中する」季節性が消え、欠品と過剰の同時発生が構造的に起きにくくなりました。
よくある質問
Q. いまExcelで管理している発注点の表は、移行時にどう扱われますか? A. 現在の水準表は「これまでの判断の記録」として貴重な材料です。導入時に現行水準と計算水準のギャップを確認し、大きくずれる商品はその理由(設定に翻訳すべき事情か、これまでの水準が古かったのか)を一緒に検証しながら移行します。
Q. 需要が不規則な商品(月に数個しか動かない商品)でも水準を計算できますか? A. 低頻度商品は統計的な扱いが難しい領域ですが、だからこそ一律設定の被害が大きい商品群でもあります。低頻度商品なりの持ち方(最小限の下支え、または受注発注への切り替え判断)を含め、貴社の商品構成でどう扱うかは無料運用診断でご相談ください。
Q. 水準が自動で変わると、在庫が勝手に増えたりしませんか? A. 水準は出荷実績に基づいて動くため、需要が増えれば厚く・減れば薄くなります。全体の在庫水準を「やや厚め/やや薄め」に振る調整は人が握れるので、「気づいたら在庫が膨れていた」を防ぐガードと監視をあわせて設計します。
発注点・安全在庫の維持体制づくりは、無料運用診断でご相談ください。 商談の中で18問の診断にお答えいただくと、その日のうちに「貴社の場合の運用の形」をまとめた仮運用設計案をお渡しします。 無料運用診断を申し込む →
関連ページ
- 商品グループごとの在庫方針設定(機能仕様)
- 突発出荷の除外・売れ方の変化点指定(機能紹介)
- 需要予測AIによる自動発注リスト作成(機能紹介)
東京大学発の