発注はこちらの計画どおりに出した。狂わせたのは、届かない入荷のほう——。
納期どおりに来ない仕入先。突然のメーカー欠品、しかも連絡は遅れてくる。海外仕入は船のスケジュール次第。この「供給の不安定」に対して、多くの現場が取れる対抗手段は「多めに持っておく」だけです。その結果、全商品がなんとなく厚くなり、在庫は膨らみ、それでも欠品は起きる——。
この記事では、供給の不安定に、一律の厚持ちではなく仕組みで備える方法を解説します。
課題の解説:供給のブレは「欠品の隠れた主犯」
欠品の原因は需要側(急に売れた)だと思われがちですが、実務では供給側——リードタイムのブレ——が主犯であることが少なくありません。
- 平均2週間の仕入先でも、実際は10日で来ることもあれば4週間かかることもある。在庫の備えが「平均2週間」前提なら、遅れた分だけ無防備になります
- メーカー欠品は「発注したのに来ない」という最悪の形で現れ、把握が遅れるほど代替手配の選択肢が減ります
- そして厄介なことに、ブレは仕入先ごとに大きく違います。正確な仕入先と、常に読めない仕入先。この違いを無視した一律の備えは、正確な仕入先には過剰で、不安定な仕入先には不足します
一般的な対処法と、その限界
①全体的に多めに持つ:最も多い対処ですが、備えるべき場所を選ばない積み増しは、在庫を全体に膨らませるだけです。不安の分だけ積む「感覚の安全在庫」は、たいてい必要な所に足りず、不要な所に厚い配分になります。
②毎回の催促電話:納期フォローとして必要な業務ですが、「全発注を人が追いかける」のは工数的に続かず、結局「大事な発注だけ」の選別になります。
③複数購買(セカンドソース化):有効な戦略ですが、全商品には適用できず、取引量の分散による仕入条件の悪化とのトレードオフがあります。どの商品でやるべきかの選別が必要で、そのためにも仕入先ごとの実績データが要ります。
「α-発注」でのソリューション
備えに、仕入先ごとのメリハリをつける
「α-発注」の在庫の備え(安全在庫)は商品ごとに計算され、リードタイムの設定は仕入先・商品ごとに持てます。納期のブレが大きい仕入先の商品はリードタイムを保守的に設定して備えを厚く、正確な仕入先は実態どおりに薄く——「不安の分だけ全部厚く」から「ブレの大きいところにだけ厚く」への転換です。同じ総在庫でも、欠品への強さがまったく変わります。
遅れは、予定日の翌日に検知される
発注は確定と同時に入荷予定として記録され、予定日を過ぎても届かない発注残は自動で検知されます(→入荷予定の管理と遅延アラート)。「在庫が切れて初めて未入荷に気づく」が、「予定日翌日に気づいて動く」に変わります。この初動の早さが、仕入先への確認・顧客への納期回答・代替手配の選択肢を守ります。
遅延の影響は、在庫リスクとして先読みされる
入荷が遅れている商品の欠品リスクは、監視機能が在庫と売れ行きから評価して知らせます(→監視アラート)。「遅れているが在庫に余裕がある商品」と「遅れたら即欠品の商品」を区別できるため、フォローの優先順位がつきます。
「読めない仕入先」が、データで見えるようになる
入荷予定と実績が記録として蓄積されるため、仕入先ごとの予定日と実際の入荷日のずれを振り返れます。リードタイム設定の見直しに加え、納期交渉・複数購買・仕入先変更を、印象ではなく記録をもとに判断できるようになります。
活用イメージ:海外仕入の納期ブレに悩んでいたアパレル雑貨卸
アパレル雑貨・服飾小物卸のAP社(商品点数 約6,000、海外仕入比率が高く、納期は平均±2週間のブレ。国内メーカー品も欠品連絡の遅さに悩まされていた)のモデルケースです。
導入前:納期ブレへの対策は「不安な商品は1カ月余分に持つ」という感覚運用。それでも遅延起因の欠品が月数件発生し、未入荷への気づきはピッキング時や顧客からの指摘が中心でした。
導入後:仕入先ごとのリードタイムと納期実態を設定に反映し、備えのメリハリを計算に載せました。遅延は予定日超過で自動検知され、欠品リスク順にフォローする運用に。蓄積された予定・実績の記録から、特にブレの大きい2社とは納期の取り決めを再交渉しました。
変化:総在庫を増やさずに遅延起因の欠品が減少し、納期フォローは「全件の電話」から「検知された案件への対応」に集約。仕入先との納期の話が、感情論ではなくデータの話になりました。
よくある質問
Q. 仕入先がそもそも入荷予定日を教えてくれません。 A. 予定日はリードタイムの設定から自動で置かれるため、仕入先からの連絡がなくても遅延検知は機能します。連絡があれば更新して精度を上げる、という運用です。
Q. メーカー欠品で長期間入らないことが分かったら、どうすればよいですか? A. まず影響範囲の把握です。当該商品の在庫が何日持つか、欠品リスクの評価で確認し、代替品の提案・顧客への事前連絡・入荷再開後の立ち上げを段取りします。「分かった時点の早さ」が全てなので、遅延検知の初動短縮がそのまま効きます。
Q. 複数購買にすべきか迷っています。 A. 全商品での複数購買は現実的でないため、「欠品の影響が大きく、かつ供給のブレが大きい商品」に絞るのが定石です。この選別には、重要度の評価(→主力商品の守り方)と仕入先ごとの納期実績データの両方が使えます。
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東京大学発の