国内仕入の発注は「来週の売れ行き」を考える仕事です。輸入の発注は違います。3カ月先の売れ行きを、今日、コンテナ1本分まとめて当てにいく仕事です。
発注してから届くまで2〜3カ月。発注はコンテナという箱の単位。商品ごとにはMOQ(最低発注数量)があり、1回頼めば数カ月分の在庫になる——。輸入商材の発注は、国内仕入にはない制約が3つ重なることで、難易度が跳ね上がります。読みが当たれば大きな粗利、外れれば倉庫を塞ぐ長期在庫。担当者の胃が痛くなるのも当然です。
この記事では、輸入発注を難しくしている3つの制約を分解し、それぞれを仕組みでどう扱うかを整理します。
課題の解説:3つの制約は「別々の問題」として解く
輸入発注の難しさは、漠然と「難しい」のではなく、性質の違う3つの制約の掛け算です。まとめて悩むと手がつかないため、分解して考えます。
| 制約 | 何が難しいか | 対応する武器 |
|---|---|---|
| ① 長いリードタイム | 2〜3カ月先の需要を今日決める。予測の外れがそのまま在庫リスクになる | 長期の需要予測+安全在庫の設計 |
| ② コンテナ単位 | 商品ごとの必要量を「箱に収まる組み合わせ」に組み直す必要がある | 積み合わせの自動調整 |
| ③ 大きなMOQ | 1回の発注が数カ月分の在庫になる。発注=在庫投資の意思決定になる | 商品ごとの在庫インパクト評価 |
① 長いリードタイム:予測期間が長いほど、ブレは大きくなる
リードタイムが7日なら、外しても翌週に修正できます。90日では、今日の読み違いを3カ月間修正できません。予測は先になるほどブレが大きくなるため、必要な安全在庫も国内品より厚くなります。船のスケジュール・通関・現地の祝祭日(春節など)によるリードタイム自体の変動も、国内仕入にはない不確実性です。
② コンテナ単位:需要の計算と「箱のパズル」の二重作業
商品ごとの必要量を出しても、コンテナに収まらなければ発注できません。何を削るか・何で埋めるかの積み合わせ調整は、需要の計算とは別の作業として毎回発生します。埋め草で足した商品が在庫の山になる——という副作用も定番です。
③ 大きなMOQ:発注のたびに「在庫の山」が立つ
生産MOQ(最低発注数量)が月販の3〜4カ月分、という商品は輸入では珍しくありません。この規模になると、発注は日常業務ではなく在庫投資の判断です。MOQが何日分の在庫に当たるかを商品ごとに確認する必要があります。
一般的な対処法と、その限界
- 担当者の経験と表計算:3制約の同時処理は表計算の限界を超えやすく、判断が完全に属人化する。担当者が休めない・辞められない構造に
- 「多めに頼んでおく」:リードタイムの不安をすべて在庫で受ける方法。キャッシュが在庫に沈み、商品の入れ替わりで死に筋化する
- 国内在庫を厚くする問屋経由への切替:制約は消えるが、輸入直仕入の粗利メリットも消える。本末転倒になりがち
「α-発注」でのソリューション
① 長期の予測と厚みの設計を、商品ごとに自動で
出荷実績から商品ごとの需要を予測し、長いリードタイム分の需要と、その期間のブレに見合った安全在庫が自動計算されます。「全商品一律で3カ月分」ではなく、売れ方の安定した商品は薄く、ブレる商品は厚くというメリハリが、輸入品の在庫総額を抑えながら欠品を防ぎます。仕入先の休業(春節・長期休暇)はカレンダーに登録すれば、前倒しの発注として自動で織り込まれます(→発注カレンダー設定)。
② 積み合わせは計算の中で処理する
コンテナ・混載の制約は発注計算に織り込まれ、「収まらない分は緊急度の低い商品を後の便へ」「余るスペースはもうすぐ必要になる商品の前倒しで」という方向で調整されます(→コンテナ・混載ケースへの割付)。需要の計算と箱のパズルという二重作業が、一つの計算になります。
③ MOQの重さを見えるようにして判断する
MOQ・ケース条件は設定として登録され、推奨発注量に織り込まれます。「この発注で何カ月分の在庫になるか」が商品ごとに見える状態で判断できるため、MOQの大きい商品の扱い(継続・交渉・整理)を数字で議論できるようになります。
届くまでの間も、見張りは続く
発注から入荷までの3カ月間に売れ方が変わることもあります。売れ行きの急変の検知(→監視アラート)と入荷予定の管理が、「発注した後は祈るだけ」だった期間に打ち手を与えます。
活用イメージ:アジアから生活雑貨を直輸入する会社
生活雑貨をアジア数カ国から直輸入するM社(商品点数 約3,000、月に数本のコンテナを仕立て)のモデルケースです。
導入前:コンテナ1本の発注計画づくりに担当者が毎回数日を費やし、リードタイム3カ月先の読みは経験頼み。それでも読み違いの在庫が倉庫の一角を常に占めていました。
導入後:3カ月先までの必要量・安全在庫・コンテナの積み合わせを織り込んだ発注案が出発点になり、担当者の仕事は「ゼロから組む」から「案を検証して確定する」に変わりました。春節などの休業も、カレンダー登録で前倒しが自動で組まれます。
変化:計画づくりの数日が大きく圧縮され、判断の根拠が数字として残るように。空いた時間は、為替や商況を踏まえた戦略的な調整——人にしかできない判断——に充てられています。
よくある質問
Q. 春節や現地工場の長期休業で、リードタイムが大きく変わります。 A. 仕入先の休業期間はカレンダーとして登録でき、休業をまたぐ分の前倒しが発注計算に反映されます。毎年の恒例スケジュールは一度登録すれば運用に乗ります。
Q. 為替や仕入価格の変動を見て、発注量を戦略的に増減させたい。 A. 推奨発注量は確定前に調整できます。仕組みが「需要ベースの基準線」を出し、為替・価格の判断は人が上乗せする——という分担が、輸入発注での現実的な使い方です。
Q. 船便と航空便を商品によって使い分けています。 A. リードタイムは商品・仕入先ごとに設定できるため、輸送手段の違いは設定で表現します。詳細な運用は貴社の調達形態を伺いながら診断でご案内します。
輸入発注の3つの制約の整理は、無料運用診断でご相談ください。 必要な期間・項目が揃った出荷実績データ(目安:24カ月分)をお預かりできれば、受領から3営業日で効果試算をご提示します。 無料運用診断を申し込む →
関連ページ
- コンテナ・混載ケースへの発注割付(機能紹介)
- 年末年始・GW前の積み増し発注で毎回困っている(休業前の前倒しの考え方)
東京大学発の