在庫が少ない。よし、発注しよう——ちょっと待ってください。先週発注した50個が、明日入荷するのではありませんか?
手元在庫だけを見た発注は、入荷待ちの商品への二重発注を生みます。逆に、「たしか発注してあったはず」という思い込みは、実は発注されていなかった商品の欠品を生みます。正しい発注量は、手元在庫ではなく「手元在庫+入荷予定−引き当て済み」という正味の在庫力から計算しなければなりません。
この記事では、この「正味の必要量」での発注を、台帳の消し込み漏れに悩まされずに毎回成立させる方法を解説します。
やりたいことの整理
「正味の必要量で発注する」の要件は、次の4つです。
- 利用可能在庫で計算する:発注量の計算が「手元在庫+発注残(入荷予定)−受注残(出荷予定)」を基礎にしている(考え方は発注残・受注残とは)
- 発注残の記録が漏れない:発注した瞬間に入荷予定として記録される。後でつける台帳にしない
- 消し込みが正確:入荷(分納含む)に応じて残が正しく減り、実態と記録がずれない
- 例外が検知される:予定日を過ぎて届かない発注残(=欠品の火種)に気づける
式そのものは単純です。難しいのは2と3——記録と消し込みを、人の手作業で維持し続けることです。ここが崩れると、式に入れる数字が間違い、計算全体が狂います。
手作業でやると、こうなる
多くの現場では、発注残をExcelの台帳で管理しています。発注したら1行追加し、入荷したら消し込む——シンプルに見えて、この運用は時間とともに必ず劣化します。
記録漏れ:急ぎの電話発注、営業経由の手配が台帳に載らない。消し込み漏れ:入荷処理が忙しい日の消し込みが翌日回しになり、そのまま忘れられる。幽霊発注残:とっくに入荷済み(またはキャンセル済み)の残が台帳に残り続け、「入荷予定があるから発注不要」という誤判断を生む。分納の混乱:50個のうち30個だけ届いたとき、残20個が正しく管理されない——。
結果、台帳と実態がずれ、担当者は結局「台帳を信じずに倉庫へ確認しに行く」ようになります。台帳があるのに使われない、が最終形です。
「α-発注」での実現方法
記録:発注の確定と同時に、入荷予定が生まれる
「α-発注」では、発注リストで確定した瞬間に、その発注が入荷予定(発注残)として自動記録されます(→仕様の詳細は入荷予定の管理と遅延アラート)。「発注書は送ったが台帳は後で」という時差がないため、記録漏れが構造的に起きません。システム外で行った発注(電話・営業手配)も取り込んで一元管理できます。
計算:発注量は、最初から入荷予定込みで出てくる
推奨発注量の計算は、手元在庫だけでなく入荷予定・引き当てを含めた利用可能在庫に基づいて行われます。「来週50個入る」ことを計算が知っているので、入荷待ち商品への過剰な追加発注は最初から立ちません。「正味の必要量」は、担当者が意識して差し引くものではなく、リストに載っている数字がすでにそれ——ここが台帳併用運用との決定的な違いです。
消し込みと検知:残の実態が自動で維持される
入荷に応じて発注残は消し込まれ、分納でも残数が正確に保たれます(→分割納品への対応)。そして予定日を過ぎても届かない発注残は検知の対象になり、「当てにしていた入荷が来ない」という欠品の火種に、在庫が切れる前に気づけます。
活用イメージ:Excel注残台帳が形骸化していた工具・金物卸
工具・金物卸のAA社(商品点数 約15,000、リードタイムは2〜8週と仕入先によって大きく異なる)のモデルケースです。
導入前:発注残はExcel台帳で管理していたものの、消し込み漏れと電話発注の記録漏れで実態と乖離。担当者は発注のたびに台帳・在庫表・メール履歴を突き合わせ、それでも月に数件の二重発注と、「発注したつもり」の欠品が起きていました。リードタイムの長い商品ほど被害が大きい状態でした。
導入後:発注の確定と同時に入荷予定が記録され、発注量の計算は利用可能在庫ベースに。電話発注分も取り込みで一元化し、Excel台帳は廃止しました。
変化:発注前の突き合わせ作業がなくなり、二重発注は構造的に発生しない形に。予定日超過の検知により、仕入先への納期確認の初動が「在庫が切れた日」から「予定日の翌日」に早まりました。
よくある質問
Q. 仕入先から入荷予定日の連絡が来ない(よく変わる)のですが。 A. 予定日はリードタイム設定から自動で置かれ、連絡があれば更新できます。予定日とのずれが繰り返される仕入先は、リードタイム設定を見直す対象として確認できます。
Q. 基幹システム側にも発注残データがあります。二重管理になりませんか? A. どちらを正とするかの設計が肝心です。発注を「α-発注」で確定する運用なら残管理も寄せる、基幹発注が残る場合は取り込みで一元化する——貴社のシステム構成に合わせて、無料運用診断の中で設計します。
Q. いまの台帳にある「怪しい残」はどうすればいいですか? A. 導入時のデータ整備が、そのまま幽霊発注残の棚卸しになります。「残っているが実態のない注残」を清算してからスタートするので、過去の乱れを引きずりません。
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